血塗られた石鏃/衣 ミコ
十二本の骨で護られた
私の心臓が
八本目から露わになって
飛んで来た石の鏃が突き刺さる
傷口から溢れ出す黒い血は
鳩尾の星の下をつたい
裂けた林檎の割れ目に溜まり
滴り落ちて
足元に広がってゆく暗い泉
覗き込んでも水面は何も映さない
空を照らす日月も
風と戯れる雉も
何も
降り注ぐ雨水を飲み込み
ただ嵩を増し続け
やがては胸の傷口まで達して
護っていた骨が
逃れられない牢屋に変わる時
私の心臓は
溺れて止まってしまうから
どうか
あなたが矢を放つ時
それは誰でも無い
あなたを殺す物である事を
覚えていて欲しい
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