夜の海/猫の耳
夜半にうっすら目をあける
カーテンの隙間から
仄かに月明かりが差し込む
部屋の中は蒼い海の世界
私は、
月影が揺らぐ波間を静かにたゆとう
どこへ流れていくのかも
どこへたどり着くのかも
わからない
手足の感覚も
寒さの感覚もなく
ただ、ゆらゆらと流されるままに
頭上に輝く満月だけが、
私の行く末を知っているかのように
哀しい光を届けてくれる
寂しいとか悲しいとか
あまりにも考えすぎて
とうに私を通り過ぎていった
今はただ、
自分の無力さを穏やかに受け入れる
意識が徐々に遠のいていく
やがて朝が来る
何事もなかったかのように
雑然とした部屋の隅のベッドの中に
私はその身を投げ出している
蒼い世界はもう
夜の海に流されて遠くへいってしまった
私の心を置き去りにして…
戻る 編 削 Point(2)