我々の欲望には、素晴らしい音楽が欠けている。/岩下こずえ
う、私はいなくなるわ。でも、きっとね。きっと、私のような、どうすることもできなかった誰かさんたちが、最期を迎えたあとに、集合するところがあるの。きっと、そのはず・・・。そこは、“(非)存在”というほの暗い底なしの沼よ・・・。いまや完全に、その顔を、その名前を、・・・その人生のすべてを忘れ去られたひとたちが、“かつて、必ず存在したものたち”のひとつとして、そこに沈んでいるの。いまあなたたちが、そして、これからあなたたちが、存在するということ。そのことから導きだされる必然的な(非)存在よ。今やもう存在せず、もうなにひとつ思い出すことはできないけれど・・・、でも、それが必ずあったということ。それが、(非
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