我々の欲望には、素晴らしい音楽が欠けている。/岩下こずえ
って!! 違う、そこじゃない!! そこじゃない・・・ってば・・・! そこじゃない・・・。君は・・・、そんなもののために、あったんじゃない・・・。そんなもののために・・・、そんなもののために・・・、そんなもののために・・・。そんなもののために!!
「こんなもののために、私は消えてゆくのね。それに、結局、ひとり置き去りにされて、ずるっ、ずるっ、と、夕闇にのまれてゆく。ああ、ひどい傷。でも、痛みはひいてしまったわ。もっとも、思い出してしまうと、ずきっ、という痛みに襲われるけれど。ああ、闇はますます濃くなって、私はますます居なくなる。いまはまだひとりだけどね、そのうちひとりでさえなくなるのね。もう、
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)