片影に怯えて 五/
信天翁
狂った「風」と乱れた「光」で
市内の公園から黄ない声が消えた
沈む「時」と浮かぶ「空」の波紋で
郊外の竹藪から衣擦れの音も去った
ただ老木のかげがちらつくばかりで
窓は開けてないのに聞こえてくる
道端での主婦らしい立ち話のこえが
むろん内容はわからないが
なにかしら錆びついた脳裏をめくられる
老いぼれたおひとりさまには
片影におびえて
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