サイレン/
イグチユウイチ
こんなに 深い夜の中を
白い救急車、真っ赤なライトを振り回して
猛スピード、過ぎて行きました。
歪んだサイレン、ちょっと間抜けで、
それでも結構 必死みたいで、速くって、
見えなくなるまで 目で追ったけど、
カーブの向こうに 消えて行きました。
ねぇ、マリー。
どうやら 俺は、
誰かの 誰かが 失われた夜に、
ひとり ほろ酔いで歩いていても
もう、心を痛めたりはしないみたいです。
そうじゃないって、言ってくれ。
戻る
編
削
Point
(3)