MW/opus
僕らは二人となった
もちろんその時、
妻は男と寝てなどいない
それでもそれが終わったのは
10年前だ
僕らは二人で
鎌倉の旅館に泊まり
音ならぬ音を聞いた
僕はその夜中、
隣で寝ている妻の鼻をつまんでみた
「何ですか?」
「いや、ちょっとね。
すまんね。」
「はぁ。」
もう少しで、
私は弔辞を読まなくてはならない
話すことは決まっている
昨日の夜決めた
思い返してみると、
一般的にみたら
僕らは幸せの側にいたのだろうと思う
ただ、
妻はそれでもたくさんの男と寝ていた
会話も途切れ途切れだった
いや、気付かぬ所で
彼女を傷付けていたのかもしれない
人々が声をかけてくれる
「あんた達は素晴らしい夫婦だ」
「将来は爺ちゃんと婆ちゃんみたいになる」
「きっと、お母さんも幸せよ」
僕の頭は混沌としていたが、
それでも、弔辞を述べ
トイレに向かった所で
たまらず吐いた
戻る 編 削 Point(0)