黒い虹の絵/中村 くらげ
 
夏だ




夕立はバリバリと瓦を噛んでいる

私は雷のようにゴロゴロと暇を持て余している

朝から付けっ放しのテレビでは

子供向けの絵画講座が流れていた

暇は右腕を勝手に動かし

机に転がっていた鉛筆で虹の絵を描き始めた

下手な絵描きの腕前では

幾重かのアーチが並んでいるだけ

これでは淋しいと暇は呟き

またも鉛筆で色を塗りだす

すると当たり前に真っ黒の塊なった

まるで長く続くトンネルのようだね

自分の絵心のなさに悲しくなるけれど

その先には光が見えているようにも見えた


長いトンネルを抜けるとそこは

真っ白な画用紙であった

そんなことをにやにや考えながら

ぐいと顔を上げると

蝉の声

雨音も岩にしみ入った




夏だ
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