「あの、気持ち悪さ」/宇野康平
その汚いものに触れたときに
少女は腕に黒い水玉が無数に散らばったのを想像した。
破裂した水道管に横たわる猫。
輪切りにした水羊羹に指が詰まっていた。
症状は進行し、先端から落ちていった。
悪い言葉は口にまとわりついた。
少女の口と目と耳をふさいでいるのに、
今というのは隙間という隙間から
ぼとぼとぼとぼと
ぼとぼとぼとぼと
ぼとぼとぼとぼと
ぼとぼとぼとぼと
ぼとぼとぼとぼと
ぼとぼとぼとぼと
ぼとぼとぼとぼと
なんども落ちない汚れのように、
しつこい
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