千津子/田園
 

金を稼ぐあてもなく、他に頼るあてもなく。
だが千津子といったら俺を恨めしそうに見つめ、それでも仕方がないわね貴方うどの大木だものね形ばかりで中身も無い、本当に駄目な人と蔑みながら、千津子も最早同じ穴のむじなであると何処かで気がついているのか、ごくまれに大層いとおしそうに俺を眺め、静かに泣く。
静かだ。俺は酷くそう思う。俺は、否俺達は誰にも知られることもなく依存以下の感情で繋がっている。
明日はあるのだろうか。
見えない、見えない。
ただ、薄汚れた窓を眺めると、嫌味なまでの晴天が、所詮他人事と告げている。
生温い風が吹いた気がした。
蝋燭の火の消える気配は無い。
生命とは鈍色の絶望だ。
千津子は南瓜の煮付けを作っている。
それだけが唯一正しく、またそれ以外の正しさは無かった。
戻る   Point(4)