水へ 水へ/木立 悟
 




泣いた夜の
径に現われる白い珠
先をゆく 先をゆく
色のない足跡


片方の動きから生まれくる
羽のかたまりのいのちたち
夜の熱をつかまえたまま
夜の辺を昇りゆく


「中指でしか開かない袋を忘れた」
「晴れの底の雨に落ちる星」
「けだものの時間と霧の時間」
「口には出せぬ色こそ標」


径に引かれた水の線に
見え隠れする声のかたち
森をすぎる
ひとつの帆


色と境の多い虹が
背と影を照らし冷えてゆく
月の軌道を追いながら
足跡で描かれた別の径をゆく


片方の涙に夜は溺れ
朽ちた壁にすがりつく
指の腹に乗る小さな空
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