水へ 水へ/木立 悟
泣いた夜の
径に現われる白い珠
先をゆく 先をゆく
色のない足跡
片方の動きから生まれくる
羽のかたまりのいのちたち
夜の熱をつかまえたまま
夜の辺を昇りゆく
「中指でしか開かない袋を忘れた」
「晴れの底の雨に落ちる星」
「けだものの時間と霧の時間」
「口には出せぬ色こそ標」
径に引かれた水の線に
見え隠れする声のかたち
森をすぎる
ひとつの帆
色と境の多い虹が
背と影を照らし冷えてゆく
月の軌道を追いながら
足跡で描かれた別の径をゆく
片方の涙に夜は溺れ
朽ちた壁にすがりつく
指の腹に乗る小さな空
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)