今日のカレー(京子の場合)/吉岡ペペロ
 
京子は弱くなければ優しくなれないと思った。
逃げ出したいほどのみじめな生活。
この暮らしを憎むのではなく愛おしむには、じぶんが弱くなければそうはなれないと思ったのだ。
体育の授業は校庭をぐるりと何周もするだけのものだった。
胸を揺らすのがいやな子や、ほんとうに生理の子たちはその時間を中間テストの勉強にあてていた。
京子は校庭を走っていた。
この景色を将来涙とともに思い出すような気がした。
みじめだった。悲しくて悔しかった。校庭を砂ほこりがまっていた。
お父さんが中毒症状で倒れ、お母さんが取り調べを受けていた。
つまらないドラマみたいだ。
ともだちはまだ知らないようだった。

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