沸騰点/ただのみきや
破水した光の枝垂(しなだ)れ
終わらない夏の囚われ
わたしは煮え立つ釜のよう
せめぎ合いの果てに溢れ出す
しろくのけぞる
朝顔のうなじ
ひとしずくの咎(とが)
藍あおく隠匿し
石のように欹(そばだ)てながら巻かれめく
理性とは消失した指先の感触か
歓喜に震える
蜜蜂の純愛
溺れるように泳ぎ
あぐねては
掻き抱く夢の花粉
狂おしい黄金
舞いかける焦点の先
死の被膜の向こう
あるいはそんな遊戯
遡上する鎧魚の顏
記憶と記憶が交配する夜明け前
正気のサイレンが血を巡り渡る
その前に
何度でも
柘榴のように搾り終えるまで
《沸騰点:2014年8月23日》
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