「堕る子」/
宇野康平
北方の風で洗面台の雌蜘蛛が咳をして死んだ頃、
南方で濡れた子を抱いて女は震えていた。
ただ、たどりついた波が水平線の先に
戻る子の影を見つめてた。
雨が止む頃、
親と同じ形をした子蜘蛛は諦めず亡骸に
餌を求めていた。
戻る
編
削
Point
(1)