狼/opus
 
満月が丸々と輝く
深い夜
涼しい風の吹く
草原の中
ヒソヒソ声が
鳴りを潜める

今夜しかないんだ
どうしてもか
どうしてもだ

ヒュー
鳥の甲高い鳴き声が
木霊する
狼どもの体が
強張る

気付かれたか
そんなはずは無い
じゃあ、一体何だ
ただの気のせいだ
いや、啓示だ
何のだ
死だ

「それでもやるしかないんだ」

狼達は堰を切ったように
走り出す
速度を上げ、
風に乗り、
風になった

草原を越え、
河を越え、
荒野を越え、
森に入り、
深い闇に入った

おい、聞こえるか
聞こえる
いるか
もちろん、いる

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