誰もいない小屋でした/煙と工場
誰もいない小屋には
誰もいないので
屋根に雪が降っても
積もるばかりで
誰もいない小屋には
誰もいない部屋の片隅で
蜘蛛がぢっと巣を張って
誰もいない小屋に飾られた
日に焼けた家族写真
誰もいない小屋には
誰もいないのに
誰かいるように
カーテンがぱたぱたと
そしてほこりが舞って
光のつぶが鮮やかに
誰もいない小屋に
誰かを訪ねるように
蝶が入ってきて
入ったのはいいけど
出口がわからず
困っておどおどしていて
誰もいないのに
誰もいない小屋は
さびしくない
ただぢっと誰かを待って
来るはずもない誰かを待って
その場にいるだけ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)