その日、風鈴の割れる音をきいた/あおば
 
堆積し目を向ける人もなく
居場所のない粗末な風鈴がどこに往ったか今では探す術も無く
耳の奥に微かに残るチンリンカラコロたおやかな音色だけが
彼の儚い存在証明となっている
短い夏の思い出に軒忍に下げられたくっきりとした絵柄の風鈴
爽やかにたおやかにはしゃぐ姿も記憶の底にだけ踊っている
風鈴が割れるのは犯罪者の仕業ですと刷り込まれたこぞの冬




初出「即興ゴルコンダ(仮)」
  http://golconda.bbs.fc2.com/
  タイトル提出は、ほしこさん。



戻る   Point(10)