誰かがついた嘘による寸劇/ういち
「そういえば、貸してもらったお金は私はもう返さないからね。」
冷蔵庫の唸りはここぞとばかりに、時間を引き延ばした。
「何でかって言うと、さっき真っ黒な宣教師の人が来たの。
それで、よくよく話を聞いて見ると私達は生まれる前から罪を負ってるんだって。
もちろん、今生きてる間にもいくつも罪を背負うしね。
で、それらは全て神様に祈ることによって許されるんだって!
だから、この暑い中わざわざ教会ま行って、
しかも、裸のおっさんが縛り付けられて血を流してる像に、
気持ち悪いのを我慢しながら
お祈りまでして来たんだから
そういうわけで、借金の催促は神様にしてよ。
ほんと、世の中には奇特な人もいたもんよね。」
彼は聞いていたのか、いなかったのか、軽く溜め息をついていつもの読書に戻った。
外では紫色の光を浴びながら、雨が降っている。
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