ルーシー・ダウト/佐久間 肇
ジャングルジムに、いつまでも残されている帽子と、
まだ、生温かいブランコの反復運動と、
お砂場に隠された猫のフンと、
あの子の、「 」と。
鍵の束からいくら言葉を選んでも。
あの子はジャングルジムのてっぺんから、降りられる言葉を見つけられなかった。
すべり台には、男の子たちが噛んだあとのガムがいじりつけられていて、
あの子の名前は、ますます分からなくなるばかり。
紺碧の夜空に、小鳥の帰る隙間も見当たらない。
うるさい小鳥が、あの子を飲み込んで息を殺しても。
あの子は罪にもなれなかった。
赤い憂さ晴らしの嵐の中を、ひたすらに走って。
小鳥を追い掛け回す。
その仕草は、幼い子どもにもなれない、あの子の懺悔。
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