呼吸には狭間がある/ホロウ・シカエルボク
輪郭だけを残した巨大な廃屋の片隅の暗がりで、静かに、感触を確かめるような律動が忘れては思い出されるかのように気紛れに行われている朝のように見える暮れ方のこと、一口だけ齧られた林檎ははやにえのように崩れた壁から剥き出しの赤茶けた鉄筋に陳列され、その歯の軌跡の上では一匹の蟻がその価値を見定めるように爪先をゆっくりとくっつけながら歩いていた、風は微かに吹いている、誰も起こさぬよう注意しているかのように、塵ひとつ巻き上げることもなく…ただ、そいつが連れてくる温度は、冷たい、途方もなく
その横の路地では、先日までの雨に洗われるだけ洗われた小さな四足の白骨が、肉料理に添えられ
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