貴種流離譚 (きしゅりゅうりたん)/……とある蛙
 

昔々のその昔
東勝神州の小さな島国
国がとても若い頃
残虐な無残な報復の果て
滅びてしまった王家の話

青空見上げ兄は涙する
謀殺された父に涙する
暗い地面を凝視して
弟は疲れ果てて涙する

着の身着のまま逃亡し

聞けば
父は王家の有力者
従兄弟に誘われ狩りに出て
騙しの狩りのその途中

非情の矢で射抜かれて
そのため落馬し倒されて
その後切られて刻まれ
熟瓜のようにぐじゃぐじゃと

父は後から謀反人
死体はちりぢり、ちぎられて
そのうえ厠に捨てられる

彼ら二人は旅の果て
涙流して山代(やましろ)の
苅羽井(かりはい)にようやく逃げ
[次のページ]
戻る   Point(6)