破片/弓夜
 
父とふたり
夜おそく
買い物へ行った

せっかく買った一升瓶
ちゃんと受け取れなくて
小さなあたしには
重かったのか
落として割れちゃった

確か
父は
これっぽっちも
怒らなかった

怒ってくれてたら
あたしはこんな
ちっぽけな
思い出
忘れてただろう

レジの下で
透明な液体と
ガラスの破片が
店の照明に照らされて
キラキラ
光ってた

きちんと謝ることもできず
きちんと怒ることもできず

あのときの
破片は
どこにもなく
あたしの中に刺さったまま
血なんて出ないまま
ずっと刺さってる
いとおしい痛みで

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