fantasm/opus
さざめく森
煌めく湖
澄み渡った空
白馬が鬣を靡かせて
草原を行く
紫色の羽虫が
周囲を飛び回る
白馬の肉が
一瞬一瞬の間に
削ぎ落とされ
気付けば白骨に
後には血も残らず
羽虫も消え去った
双子の姉妹が
笛を吹く
ピーヒャラ
ピーヒャラ
音に合わせて
稲妻が落ちる
笛のメロディに合わせて
稲妻がリズムを刻む
彼女達が飽きるまで
演奏は続き
彼女達が飽きた頃
周りには
何も残らない
聳え立つ山の裾野に
大きな亀裂が入っている
そこから1時間に1度
半径10cm大の
シャボン玉が吹き出る
シャボン玉は風に乗り
麓へと降りて来て
周囲を呑み込む
そのシャボン玉に
1匹のリスが触れた
リスはその瞬間ワニになった
次の瞬間、象に
次の瞬間、ゴリラに
次の瞬間、蝶になり
次の瞬間、霧散して消えた
夜の帳が降りて来ると
闇から手が伸びて来て
手は山や湖、生き物達を包み込む
そして、
深い快楽と絶望を掬い、
握りしめ、
ただ朝を待つ
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