「痩せ消えたままに」/宇野康平
 
後退で箱の中はゆりかごから落ちて震え。

笑みを倣う行列は歩くが、道に足跡は無い。

記憶からずれて遠くなった心音。

斜面上を軽い言葉で撫で、

小さな心臓はどこかへ消えた。

なぜ、と足跡を辿る、顔知らぬ母。
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