送り火/山部 佳
 
ナスの牛やキュウリの馬は
陽射しと風に、干からびてきた
筋雲は高くなって、素知らぬ顔で
高みの杉木立に響いて、蜩が鳴く

送り火を焚いて、ほっと安堵する
父や祖父母は、笑顔で帰っていく
最後まで、心配顔で残るのは
揺らめく炎の向こうの、母の面影

早々と、生涯を終えた蝉が一匹
地面に転がって、長い影を揺らせる
言い訳にしかならないが
私も懸命に生きている、と独り言ちる

やっと安心した顔で
炎に揺れる木立の向こうに
母の姿が見えなくなるまで
私は、何本も何本も焚き木をくべる

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