小人/赤青黄
 
小人


――なんにもないのか、なんかあるのか

そんなことをめぐる、小さなお話。


幼少期の話だ。いや幼かったころの話だ。僕は蜜柑が嫌いだった。いや、ある日突然嫌いに
なった。それは僕がまだ果物が大好きで、野菜も、そうトマトだって嬉しそうに食べていた、
幼稚園生の頃の話だ。

昔からゆっくりすることが嫌いだった。僕はせっかちだった。するとほら何にもない所から
声が聞こえたもしもし、もしもし、ゆっくり匙を砂糖の海の中でかき混ぜるようにして、た
ぶん僕らは、不器用に生きてるってこと、そんなことばかり考えてられないさ。だって僕ら
忙しいし、死んだあとのことはよくわからな
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