さそりの星(ゴルコンダ未投稿)/Giton
あの赤い大きなやつを昔は支那では火(くゎ)と云ったんですよ。
──────宮沢賢治『土神と狐』
寒蝉敗柳に鳴き大火西に向かひて流るる秋のはじめになりければ
──────『西遊記』(中島敦『悟浄出世』)
こんなすがすがしい夏の夜は
鬱金(うこん)シャッポ きつねの幻術
思いきり上等のいでたちを装い
野はらの恋人を訪ねようとする
天末を這うさそり 赤い目だま
流沙(ルサ)は滔滔と往き
石炭袋の深さは知るものとてないが
マジェランの星雲は今宵なお見えず
“大火は秋を燃やし尽くす浄土の原”
腰に提げた{ルビ贋物
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