ヤクルト/夏美かをる
っちゃうからね〜」
立派な金歯、銀歯は
我が家に白黒テレビしかなかった時代の
素朴でぎこちない子育ての証
それを見て娘は「きゃあ!」と小声をあげる
小さな瓶口に合わせて唇をすぼませた可愛い表情を
毎晩午後八時三十分に見つめている
高さ八センチの容器にすっぽり入る大きさの幸せは
切らしたら、それきりになってしまいそうなほど
淡い甘酸っぱさで味付けされている
ステテコ姿で夜道を急いだ父が必死に護ろうとしていたもの
私も今 それにすがろうとして手を伸ばす、その先に
よそいきのおしろいを塗ったお母さんの肌の色の容器
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