我々の暗号/草野春心
 


  暗号は箪笥にしまわれていたが
  防虫剤の匂いに毒されもう使い道はなかった
  幼少期に誰もが熱をあげやがて棄て去った玩具同様
  為されるべきことは二、三あったものの
  その手段を我々は長らく失念しており
  陽射しに似た雨は冷えた傘のうえに降り
  雨に似た陽射しが貴方のカーディガンの袖を濡らす
  足元に落ちたピーナツが形成する音の直方体
  このうえない、我々の、正確な、破裂



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