時よ/吉岡ペペロ
蝉がちりちりと鳴いている
曇天に夕方の縞模様ができている
ヘリの音がする
電線がうごかない
縞模様もうごかない
ヘリの音が遠ざかる
遠ざかれば遠ざかるほど
それはヘリらしい音になる
鳴きやむ蝉がいれば鳴きだす蝉がいる
だらんと世界は歳をかさねてゆく
執拗にがまん強く
なんにも変わらないふりをして
時よ、おまえの威力は甚大だ
水どころの話じゃない
積水どころの話じゃない
宮本武蔵どころの話じゃない
時よ、おまえには逆らえない
小船にのって流されるしかないのだよ
水の出口が海ならば
時
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