湿っている/吉岡ペペロ
蒸し暑い曇天にカミナリがときどき光っている
だいぶたってから音が聞こえる
町並みが湿っている
湿っている
悲しい気持ちが詰まってくる
戦争と疫病を向こう側に見ながら
猟奇殺人と賎しい役人にじぶんたちの闇を見つめている
従軍慰安婦が強制されたものだったのかどうかは
軍人だった沢山のひとたちに聞けば分かることだろう
戦争というものは
負けたら尾をひくということだけははっきりとしている
あの戦争に突入した切実さとはなんだったのだろう
なにものにも代えがたいそれは切実さだったのだろうか
金がなくて軍事力があったから始めてしま
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