隻影を落として/
信天翁
丘に控えた公団住宅を取り巻く
風は脈を沈めていた
光は息を殺していた
盆踊りのやぐらを無視するように
七階の窓からは
敷き布団を叩く音が重たげに─
四階の窓からは
着布団をはたく音が軽やかに─
それぞれ こだましていた
穏やかな暮しの紡ぎ音のように
戻る
編
削
Point
(3)