脈動/葉leaf
新しく入った職場で私は一番の若手であり、これまで肉体労働を転々として来た身として事務労働は初めてだった。電話の取り方から来客の対応、文書の書き方などすべて未経験のところから責任のある仕事を任され、ミスをしては先輩や上司に指摘された。私はいわば賤民だった。人の集まりは必ず最下層を必要とする。私はその最下層に配属された、まずそれが本当の就職の意味であろう。
あるとき、ラジオ局から仕事の取材があった。私は原稿を用意して、繰り返し音読し、不自然さがないか、相手に伝わりやすいかなど工夫して収録に臨んだ。だが収録時は緊張してしまい、声が高くなったり低くなったり、話が早くなったり遅くなったり、噛ん
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