トーキョー/智鶴
た
唯一嘘だけ、虚像だけ
穴の開いた胸で抱き締め乍ら
世界が滅びる夢を見ていた
血と鉄と錆で出来ている
ベクシンスキーの世界観に似ていた
誰もが無味乾燥な理想郷で灰色の仮面を被っている
未完成の美しさに気付かないのはそのせいだ
完璧なものなんか何処にも無いのに
青白く発光する小さな夜中が何よりも大事だなんて
口に出せば繋がりも消えてしまうだなんて
随分永い時間口を開いていなかったから
皆、机上の空論で会話している
錆が軋む音で目を覚ました
冷たい朝がもう其処までやって来ている
夜明け
何処かで遠雷の音が聞こえる
世界が滅びる夢を見ていた
遠くで巨大な石の化け物が声も立てずに慟哭し、頽れた
その時に
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