リノケロスの肉球/ハァモニィベル
いかにもその渡世を彷彿とさせる
全身傷だらけで 目の据わった
一匹の猫が 固く舗装された道を歩いてくる
踏みしめる肉球 心は動かない
ただ黒く固い舗道のザラつく感触のみ
彼は自分の中に迷い込んだりしない
ふと 猫は見慣れぬ物体を 自らの導線の先に見つけた
いかにもその渡世を彷彿とさせる 用心深い身体の動きを伴いながら
己しか信じない二つの眸が その物体へと真直ぐ近づいていく
一撃の距離で立止まると 謎の相手の呼吸を伺う
彼は誰かの中に迷い込んだりしない
そこから 彼は物体へと 頭だけを徐々に近づけながら
そおおっ と、 鼻を寄せた
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)