人質は天使/やまうちあつし
 
人質は天使
銃で脅して
無理やりコートの
ポケットに押し込んだ
鰐皮が冷たいと泣くので
真っ赤な頬を平手打ちした
頭上に浮かぶ輪っかは
使用期限の切れそうな
蛍光灯のようだった
つまんで車窓から放り投げると
がちゃんと割れた
神は一体
いくらの身代金を出すだろう
それほど多くは望めまい
愛の一言で
全てを済まそうとする
薄情者などに
俺は携帯電話の電源を切り
天使を懐に移した
鮫肌が温いと笑うので
青白い頬を平手打ちした
貨物列車は
世界の果てへと急いだ
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