陽子のベクトルは太郎を指向するのか/草野大悟2
 
ろうとした。
 その時「おー、陽子、陽子どこ行くんだ、俺だ、俺」ホームレスが大声で叫んだ。
 陽子は、その大声に渋々反応して、仕方なく本当に仕方なく声のした方を振り向いた。
 こうして目出度く再会を果たした二人は、いつものようにM駅前の食堂に直行し、いつものように店員や客の冷たい視線を無視し、カツ丼とビールを注文。
 太郎が山に入っている間のいろんなこまごましたことを喋り続ける陽子。熱心に聞くふりだけしている太郎。
「あたしさぁ赤いキャラバンシューズ買ったんだ。それでね、これ履いて高岳に登りたいな。あそこに月見小屋ってあるじゃない、そこに泊まって日の出を見るの!」
 (勝手に山行プラン
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