陽子のベクトルは太郎を指向するのか/草野大悟2
 
望することができた。
 太郎は、うーん、と背伸びをした。
 北も、うーん、と背伸びをした。
 山々が最後の最後にプレゼントしてくれた素晴らしい景色に、四人はすっかり魅せられていた。
 
感動を胸に縦走を終えた四人が、チープな民宿でしばしの休息をとっていると、熊ソックリな民宿の主人が部屋にやって来た。
「守田さんってこの中にいるんかな?」
「はあ、俺ですけど」
「あ、女の人から電話」
「え?」
 民宿の入口近くに設置してある電話の所まで歩いて、受話器をとった太郎の耳にいきなり飛び込んできた怒鳴り声。
「太郎、あんたいったいどこウロウロしてんのよ! あんたが、八月一日には山を
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