陽子のベクトルは太郎を指向するのか/草野大悟2
ゃん。
太郎は、登頂の感動にうち震える前に、寒さにうち震えていた。
北岳バットレスもよく見えねぇし、最悪、極悪非道。
とにかく、
「北、写真」
「はい」
またも、同じ位置どりで、またも北は、撮るだけの人で写してもらえる人にはなれなくて、そのことに気づく者もいなかった。やはり、育ちの良さは時として不利に働くようだ。
八月一日 雨 沈殿
八月二日 雨 出発
雨続きで、うんざり。
ぶつぶつ言いながら、野呂川乗越、仙丈岳通過、大滝到着、設営。
八月三日 晴れ
入山以来初めてのお日様。
大喜びの太郎と北。ついでに年下の先輩二人。
「さあ、張り切って行こう!」
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