陽子のベクトルは太郎を指向するのか/草野大悟2
 
しまった。
 午後三時 横窪小屋到着
 今日はここまで。メシだ、メシだ。頭の中は、メシのことしかない太郎だった。が、晩メシの時間には、少しばかり早かった。
(ちょっと小腹がすいたな、よしっ!)
 太郎は、北をひっぱって小屋のゴミ捨て場に直行した。
「う〜ん、なかなかリッチな食い物があるなあ、な、北」
「えー、これ拾うんですか?」
「決まってるじゃん。しっかり匂って拾えよ。腐ってたら多少ヤバイから」
「多少って、ホントウに危険ですよ。食中毒にでもなったどうするんです」
「大丈夫、俺の辞書に食中毒という言葉はない」
「それって、ナポレオンですね」
「そ、ナポレオンは落ちてないか?
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