陽子のベクトルは太郎を指向するのか/草野大悟2
 

「うむ・・・」
「ど、どうも、初めまして・・・」
「・・・・・・!」
浩一郎がギロリと太郎を睨んだ時、太郎の全身を恐怖が走り抜けた。その瞬間「すみません、すみません、すみません」太郎は本能的に平身低頭モードに突入し、ひたすら頭を下げ、ひたすら謝っていた
 頭の中が「すみません」一色になっていた太郎が、父親の横で笑いを必死で堪えている陽子に気付くはずもなかった。
「じゃね、太郎、バイバイ、お父さん帰ろ」
「うむ・・・」
 浩一郎は、「アチョーの一撃でも見舞わないことには気が済まないぞこのやろオーラ」を、娘の一言で渋々諦め、
「♪ あっるこ〜、あるこー、わたしは〜げんきぃー♪ 
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