陽子のベクトルは太郎を指向するのか/草野大悟2
い。
陽子は詳しかった。
展示してある作品を前に、次々と独断と偏見に満ちた解説を加えていった。
「これ、祐三ね、祐三っていっても加山雄三じゃないよ。イケメンの佐伯祐三だよ。彼はアカデミックなそれまでの作風をブラマンクから、ケチョンケチョンに貶されてやけくそになって、めちゃくちゃ現場で描きあげていったのよ。ま、ブラマンクとかの影響も受けてるけど、佐伯の絵、当時結構パリで評判だったみたい。でね、調子に乗って日本に作品を持ち帰って展覧会を開いたんだけど、見事にスルーされてしまってね、またパリに戻ったのよ。そして、パリで死んでしまったの、結核でね。な〜んかロマンチック。誰かさんとはぜ〜んぜん違う
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