やさしい世界/opus
手首が落ちていた
拾って見聞
多分女性のもので
若い
爪は綺麗なピンク色に塗られていて
指はすらっとしている
中指が人差し指より
少し長くて
生命線がはっきり見える
匂いを書いでみると
少し腐敗臭
だけど状態は悪くない
とりあえずビニール袋に入れて
持ち帰ることにした
周囲は
見渡す限り瓦礫で満たされていて
遠くから野犬がこちらを見張っている
要望はこの手か
それとも僕か
まぁ、襲って来たら
逆に今日の晩飯になるのだけれど
空の色が赤く染まる
目の前に太陽が大きく丸まると輝いている
この瓦礫の山の中で
この夕陽に満たされる時間帯
この時
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