空洞/飯沼ふるい
 
あなたが風のひとすじになるならば
もう誰もここにいやしない
その為に
向かいの棟の灯りも事切れ
捲れた日付は
とうに
未来からも窺い知れない場所まで
わたくしたちを運んでいる

いつからの付き合いだったろう
眠気にも似ている
意識、あなたの、未遂の
いつも
抱き寄せようとして潰える
火照り
あなたはいたずらに
落ちた日付をひらと揺らしていなくなる
わたくしもまた消化され
ひっそりと、その形をうしなってしまうのだが
それから少し経ち
仕事を終えて
アパートの玄関を開ける
わたくしがいる
戻る   Point(5)