八月の欠片/nonya
 

GIRAGIRA

あの頃の僕の瞳は
油の浮んだ水溜り
空も街も人も季節も
虹色に濁って見えた

今にも分解しそうな心を
繋ぎ止めていたのは
少し哀しい臭いのする
ギラギラ



KURONEKO

柔らかな曲線で閉じられた
暖かい真っ暗やみ
密やかな身のこなしで
人の時間に潜り込み
ふたつの小さな月で
人の暮らしを涼やかに眺める



WADACHI

去年の夏の戯言の
文字を入れ替えるだけで
今年の夏の戯言になるという
わたしの薄っぺらな現実

綺麗に足跡を残そうと
格好つければつけるほど
泥濘にはまってしまうという

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