幸せの庭/やまうちあつし
 
豆腐を買いに行ったきり
帰らぬ夫に見切りつけて
妻は子供を兵隊に仕立てた。

子供は戦場で人を殺した。
戻らぬ父と待たぬ母のかわりに
何人も殺した。

そして勲章をもらった。
家に持ち帰ると
子供の留守には母親が
身につけて手を上げた。

自分の勲章が欲しくなった母親は
前線を志願した。
そして殺しに行った。
剣よりもピストルが性に合っていた。

その頃息子は結婚していた。
子供をもうけ楽しく暮らした。
休日になると
新しい勲章をぶらさげて
母親が帰還した。

勲章が閃くたびに
みんなは庭で手を上げた。
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