遺書/葉leaf
 
た。人生はあまりにも愛情で満たされていた。私から発されすべてを一巡りして私へと帰ってくる旅人のように、愛情は遍歴し出会いと別れを繰り返して行った。

私は社会の歯車となることで、歯車としての主体性を持って歯車として成長していった。それは、歯車でない役割を果たすときにも活きるものだった。呼びかけに答え更に呼びかけていく茎の生長、しかも世の大多数と同質で豊饒な生長。私は庶民としての水平性と愛情で起伏と抑揚のある世界を見た。庶民であること、その生活に思想と倫理と表現の源泉が果てしなくあり、私はもはや虚構でもって世界に対抗する必要はなくなっていた。世界は庶民の積み重ねに過ぎない。同じ庶民として同じく渡
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