亀の教え/まーつん
 
 海の大さを知るためには
 一滴の水を
 見詰め直さなければならない

 と、老いた亀は言った

 波打ち際で遊ぶ
 他人の子供を
 呆然と眺める
 僕の足元で

 亀はそう言った

 その日
 波頭は美しく泡立ち
 溶けかけた夕陽は
 潮騒の向こうに
 ぬるく燃えていた

 水のお喋りに
 耳を傾けていた僕は
 草原の騒めきを思い出した

 どちらも、
 よく似ているな、と

 すると、いつの間に
 そこにいたのか
 亀が一匹、首を伸ばして
 こちらを見上げていたのだった

 砂漠の空虚な豊かさを
 知りたければ、一粒の砂を


[次のページ]
戻る   Point(15)