ひとつ 奏夜/木立 悟
ふくらんだ水を光の茎が
幾つも幾つもすぎてゆく
未明を見る弧
水を穿つ小さな火
誰かが径に刻んだものを
何かが触れてはすぎてゆく
粗れた光が歩みやがて馳せ
立ちどまりつまづき転がってゆく
姿もなく風もない
音だけの渦が土を行き来し
夜を廻し
夜を鳴らす
灰の鱗が現われては消え
宙は煙り わだかまり
ざわめきはしずまり
しずけさという名のさざめきとなり
羽の生えた花
陽のない午後の青
広場 噴水
空の少ない径の水滴
どこまでもどこまでも青は嘘で
自身より明るいものを見下している
青はそれで良いのだろう
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