ただ一度/Giton
 
楽しかった花火大会 ただ一度。

 ビルに隠れて花火は見えない
 河原のほうでやっているのだろう
 あざやかにきこえる炸裂と離散の点綴音

楽しかった花火大会 ただ一度。

  浴衣の壁が行く手を阻む
  手をひかれ嫌々歩く花火大会
  がやがやうるさい拡声器と煩(わずら)わしい露店の列
  とうに死に絶えた川面(かわも)に腐臭立ち昇り
  アスファルトの継ぎはぎと染みが心に焼き付く花火大会
  最後の2分だけ見えた花火大会‥

楽しかった花火大会 たった一度だけ。

 異郷に散るたまゆらの灼熱と硝煙を
 夢中で撮影しては送り続けた80枚の画像
 
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